伝説のLidoはタイでどう再現されたのか

[Ballyshear Golf Links / バリシアーゴルフリンクス]
04.タイゴルフ
04.タイゴルフ

タイのBan Rakat Club(バンラカットクラブ)で、Ballyshear Golf Links(バリシアーゴルフリンクス)をラウンドしてきた。

このコースの元になっているのは、かつてニューヨークに存在し、「世界で最も素晴らしいコース」とまで称された1917年開場のLido Golf Club(リドーゴルフクラブ)である。

リドーはC.B.マクドナルドが設計し、弟子のセス・レイナーが造成に協力、さらに後にオーガスタナショナルゴルフクラブやサイプレスポイントクラブを手がけるアリスター・マッケンジーも関わった伝説的なコースだった。しかし、第二次世界大戦中に閉鎖され、失われてしまった。

マッケンジーがゴルフコース設計の仕事をするきっかけになったのが1914年のカントリーライフ誌の懸賞つき『理想の2ショットデザインコンテスト』で優勝したことがきっかけなのだが、このコンテストはリドーのデザインコンテストでもあった。マッケンジーのアイデアは最終の18番ホールに採用されている。

マッケンジーが優勝した18番ホールのデザイン

18

その伝説のコースを、ギル・ハンス2021年にタイで現代によみがえらせたのが、このBallyshear Golf Links(バリシアーゴルフリンクス)である。もともとこの場所には、1991年開場の日系ゴルフ場Kiarti Thanee Country Club(キアタニ・カントリークラブ)があったが、全面改装によって生まれ変わった。

「Ballyshear」という名は、C・B・マクドナルドが特別な思いを寄せていた名前でもある。彼は、アメリカ初の18ホールコースであるChicago Golf Club(シカゴゴルフクラブ)の近くに構えた自邸にこの名を付けただけでなく、父や祖父が住む英国の邸宅や、スコットランドの自宅にも同じ名を与えていたという。そうしたマクドナルドへの敬意を込め、ギル・ハンスの発案でコース名がBallyshear Golf Linksと名付けられた。

この記事は、ラウンドから6か月後にあらためてまとめたものである。ラウンド直後に感じたことは、こちらの記事にまとめている。

上記の記事を簡単にまとめると、

バリシアーゴルフリンクスは大きな期待を持ってラウンドした。実際にプレーしてみると十分に楽しめるコースではあったが、NGLAなどマクドナルド設計の本物を知っている立場からすると、その感動のレベルは超えてこなかった。そのため、トム・ドークがウィスコンシン州で再現したザ・リドーに、より大きな期待を寄せている。

という内容だった。

では、何が違ったのか。今回、記事をまとめるにあたって改めて考えてみた。

まず、The Lidoは最新の『Golf Magazine』世界TOP100コースで48位にランクインしている一方で、バリシアーGLはランクインしていない。その理由を自分なりに考えてみた。なお、The Lidoはまだ未訪問のため、ここでの比較は、マクドナルドの最高傑作とされるナショナルゴルフリンクスオブアメリカ(NGLA)をラウンドした経験をもとにした想像も含んでいる。

オリジナルのリドーゴルフクラブのレイアウト図

復元されたザ・リドーの衛星写真

オリジナルのLido Golf Club(リドーゴルフクラブ)と、トム・ドークが再現したThe Lido(ザ・リドー)を見比べると、レイアウトはかなり忠実に再現されていることがわかる。

一方で、バリシアーGLはオリジナルと比べるとルーティング自体が大きく異なっている。オリジナルではOUTコースが外周を反時計回りに回り、INコースはその内側に配置されていたのに対し、バリシアーGLではOUTコースが西側、INコースが東側に分けて配置されている。ホール名も、オリジナルでは2番がPlateau、6番がDog’s Legだったのに対し、バリシアーGLではそれが入れ替わり、2番がDog’s Leg、6番がPlateauになっている。

オリジナルのリドーゴルフクラブのレイアウト図

バリシアーゴルフリンクスのレイアウト図

ただ、評価の差は単純にルーティングを忠実に再現したかどうかだけではないとも思う。バリシアーGLにはクラシックテンプレートの要素が詰まっていて、実際に楽しくラウンドできた。一方で、NGLAで感じたような強い印象や高揚感まではなかった。その違いは、起伏の差にあるのではないかと感じている。

バリシアーGLは全体的にフェアウェイがフラットな印象が強く、地形のうねりやアンジュレーションが十分に再現されていないように見えた。予算の問題なのかどうかはわからないが、コース全体を見渡した時に少し物足りなさを感じた。このあたりが、ギル・ハンスの今回の仕事の限界だったのかもしれない。一方で、ザ・リドーはレイアウト図や評価を見る限り、ドークがよりうまくマクドナルドらしさを再現しているのではないかと思う。

もっとも、今回のハンスの仕事で評価できる点もある。もともとキアタニ・カントリークラブがあった、制約のある土地に、まったく別のルーティングでLidoの要素を落とし込んだこと自体は十分に評価できると思う。

実際、バンラカットクラブのWebサイトにも

伝説のリンクスコース”リドー・ゴルフコース”をモチーフに、米国のゴルフコースデザインの巨匠チャールズ・ブレアー・マクドナルドにオマージュを込めてデザインした”バリシアーゴルフリンクス”を造ります。

と「完全再現」という言葉ではなく、モチーフやオマージュという言葉で説明されている。

そう考えると、完全再現を期待しすぎていた自分の見方にも理由があったのかもしれない。

ティーはブラック、グリーン、ブルー、ホワイトとあり、私はブルーからティーオフした。(ブラック・グリーンの場合はパー71、ブルー以下はパー72)

1番ホール(First) 358ヤード パー4

ストレートなパー4

NGLAの15番ホールNarrowをベースに造られている。左右にあるバンカーがフェアウェイを狭くしていた。

2番ホール(Dog’s Leg) 460ヤード パー5

ブルーティーの場合は距離の短いパー5。ブラックティー(510ヤード)、グリーンティ(490ヤード)からの場合は距離の長いパー4。

アベレージゴルファーにとって460ヤードがパー4だときついのでパー5に設定してくれている。逆にブラック・グリーンからはタフでやりごたえのあるパー4になっている。

オリジナルのリドーでは6番ホールで左ドッグレッグだが、バリシアーGLでは右ドッグレッグ。イングランドのHarogate ClubのJ・C・ウォルシャムがリドーコンペに応募した作品。

セカンドショットはウェイストエリア越え。

3番ホール(Eden) 148ヤード パー3

セントアンドリュースの11番ホールを参考にしたパー3

グリーンから振り返った風景

4番ホール(Channel) 532ヤード パー5

イングランドのLittlestoneの16番ホールを参考に造られた2ウェイのパー5。右はショートカットだがフェアウェイの周囲はバンカーに囲まれていて、左は遠回りだが比較的安全。

5番ホール(Cape) 409ヤード パー4

左ドッグレッグのパー4。NGLAの14番を参考に造られている。左の窪んでいるエリアは池が配置されている。オリジナルのリドーは池ではなくウェイストエリア。

オリジナルのリドーはウェイストエリアなので左に外しても挽回できるが、バリシアーは池で、しかも左に傾斜しているため、より緊張感のあるショットが楽しめる。

グリーン右サイドから見た風景。

6番ホール(Plateau) 352ヤード パー4

右ドッグレッグのパー4。オリジナルのリドーのPlateauは2番ホールでストレートなパー4

7番ホール(Hog’s Back) 452ヤード パー5

距離の短いパー5。NGLAの5番ホールを参考にしているが、NGLAはフェアウェイが左右に転げるように馬の背(英語では豚の背になるが)になっていたが、バリシアーGLではあまり気にならなかった。

ちなみにNGLAのHog’s Backはフェアウェイが丸まっているのがよくわかる。こうしたところに、バリシアーの詰めの甘さを感じた。

セカンドはフェアウェイを横切るバンカー越え。

8番ホール(Biarritz) 179ヤード パー3

オリジナルのリドーではグリーン右サイドが海だったのでホール名はOceanと名付けられていたがグリーンはビアリッツタイプだった。

本来のビアリッツは前面のグリーンと後面のグリーンを繋ぐ深い溝があるが、バリシアーGLの溝は深くなかった。

9番ホール(Leven) 286ヤード パー4

距離の短いドライバブルパー4。Lundin Golf Clubの16番がオリジナル。

10番ホール(Alps) 370ヤード パー4

オリジナルはプレストウィックの17番を参考にしている丘越えのパー4。ティーショットを右に打てばグリーンが見える。

グリーンは写真の中央に棒が見えるがその先。

右サイドから少し前に進むとグリーンは見える。グリーン手前にはバンカーが配置されている。

11番ホール(Lagoon) 381ヤード パー4

オリジナルのリドーはストレートなパー4だがバンラカットでは右ドッグレッグのパー4

12番ホール(Punchbowl) 400ヤード パー4

池越えで左に対角線上にフェアウェイが延びるパー4。オリジナルは逆に右にフェアウェイが延びている。

グリーンはすり鉢状のパンチボウルグリーン。

13番ホール(Knoll) 279ヤード パー4

Piping Rockの13番ホールを参考にしたドライバブルパー4。

14番ホール(Short) 100ヤード パー3

NGLAの6番ホール、Piping Rockの17番ホールを参考にした距離の短いパー3。グリーンはバンカーで囲まれている。

グリーン中央部は凹んでいて、この日のピンは外側の高い段に切られていたので左右に外すとパッティングの難度が上がる。

15番ホール(Strategy) 325ヤード パー4

右ドッグレッグのパー4。

トム・シンプソンがリドーコンペに応募しようとしていたが、審査員に知人がいたので応募を辞退したが、マクドナルドが採用することを決定したホール。複数の攻略ルートがある。

16番ホール(Redan) 162ヤード パー3

世界で一番コピーされているレダン。オリジナルはノースベリックの15番。NGLAの4番、Piping Rockの3番も参考に造られた。

バリシアーのレダンは、バンカー配置、グリーンの角度、右サイドからの傾斜など再現度が非常に高いなと思ったが、NGLAのレダンのティーイングエリアで感じたあの興奮には及ばなかった。ホール全体を借景も含めて立体的に見せることにはギル・ハンスでは限界があったのだと思う。

NGLAのレダン
17番ホール(Long) 543ヤード パー5

セントアンドリュースの14番ホールを参考にした右ドッグレッグのパー5。

18番ホール(Home) 416ヤード パー4

アリスターマッケンジーがリドーコンペで優勝した作品。

本来は複数のルートがあるホールだが右ルートはフェアウェイが広い(17番のフェアウェイを共有)が距離が必要。そして右へのティーショットを成功してもグリーンへのアングルが左ルートより厳しくなり、右を選択するメリットがあまり感じられなかった。

本物を知っているとやや物足りなさは残るが、タイでクラシックテンプレートを気軽に楽しめるコースとしては魅力があると思う。

     

I’m a golf-a-holic man. ゴルフバカです。

ゴルフのためなら世界中どこでも行きます。食事とお酒も大好きな食いしん坊ゴルファー。

2026年現在、世界25か国・地域で日本国内約600コース、海外は約300コースをラウンド。ゴルフの腕前は平均スコア90前後のエンジョイゴルファー。

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