ベトナムの日本人向け情報サイト Viet-Jo に、タイガー・ウッズがベトナム・ホーチミン市南部でゴルフコースを設計するという記事が掲載されていた。

記事によると、ビングループ(Vingroup)が開発中の大型沿岸都市計画「Vinhomes Green Paradise」で、ウッズが「West – Sunset / ウエストサンセット」コースの設計を担当するという。
コースは総面積155ヘクタールの海沿いの埋立地につくられ、設計テーマは「カンゾーの夕日」。自然の風や地形の変化を取り入れながら、初心者から上級者まで楽しめる戦略的なコースを目指すとのこと。
同じ敷地内には「East – Sunrise / イーストサンライズ」コースも計画されており、こちらはロバート・トレント・ジョーンズJr.が設計を担当する。
環境面については、この一帯がマングローブ林に囲まれた環境保護区の周辺であるため、地盤や生態系への影響を抑える必要がある。そのため、埋め立てや造成にはオランダの最新の地盤改良技術を用いると説明されている。
どのあたりの場所か調べてみた
この記事を読んで、ホーチミンのどのあたりに建設されるのか地図を確認してみたところ、ホーチミンの南の海沿いに広がるエリアであることがわかった。湾を挟んで東側の対岸にはブンタウが位置している。
ホーチミンの南部沿岸は、近年大規模開発が続いているが、依然として自然保護区に隣接するエリアも多く、土地の扱いには慎重さが求められる場所でもある。
自然のリンクスが増えるかと期待したが、実態は埋立地の造成コース
海沿いと聞くと、自然の砂丘や海風を活かした「ベトナム版リンクス」を期待してしまうのだが、今回の計画は「埋め立てた土地に造成してつくるコース」である。
ゴルフコースマニアの視点からすると、土地そのものが持つ自然のうねりや地形を活かすことができないのは残念である。
どのような仕上がりになるにせよ、周囲は環境保護区にも近く、自然環境への配慮が十分に行われるのかも心配な点である。
タイガーとRTJ Jr.という人選について思うこと
今回のプロジェクトでは、タイガー・ウッズがWest–Sunsetを、ロバート・トレント・ジョーンズ Jr.がEast–Sunriseを担当するという豪華な2名体制のように見える。
しかし個人的には、この人選には少し引っかかるものがある。
●タイガー・ウッズ
近年はコース設計の実績を増やし、一定の評価を得ている。
ただし、世界的に“名コース”と呼ばれるレベルの作品はまだないのが現状である。
●ロバート・トレント・ジョーンズ Jr.
1990年代ならコース設計の主役とも言えた人物で、ベトナムではホイアナ・ショアーズという素晴らしいリンクスを近年、手がけた実績がある。ただ、コース設計の現在のトレンドで言えば“第一線”ではないというのが正直な印象である。
人選の理由は「知名度」と「消去法」かもしれない
今回の組み合わせは、
・タイガーはベトナム人でも誰でも知っている世界的スター
・RTJ Jr.は昔からの大御所で、ベトナムで成功例もある
という、わかりやすく安全な選択だったのだろう。
しかし、世界的な名コースを目指すのであれば、より攻めたデザイナー起用や、土地の魅力を最大限に引き出せる布陣の方が適していたかもしれない。
もっとも、今回のプロジェクトのように 「埋立地にゼロから造成してほしい」という条件で依頼すると、現在世界の第一線で活躍しているトップデザイナーたちは、そもそも引き受けない可能性が高い。
世界的な設計家たちの多くは、「素晴らしい土地ならぜひ設計したい」「土地の魅力が乏しい場合は慎重になる」というスタンスであるためである。
そう考えると、今回の人選は“消去法的な最適解”だったのかもしれない。
とはいえ、期待値はゼロではない
ロバート・トレント・ジョーンズ Jr.はホイアナ・ショアーズの成功例があるし、タイガーが近年設計したコースも悪いコースではないらしい。
埋め立て地という制約があるなかで、どこまで個性を出せるか。
完成したらラウンドしに行こうと思う。


コメント
なるほど、のぶあまさんならではの視点で非常に興味深いです!