私は、世界中の名門ゴルフコースを巡る旅を続ける一方で、辺境の地にひっそりと佇むローカルなコースや、設計にひと癖ある“変わり種”のゴルフ場にも惹かれてきた。
そんな中、golf.comのある記事に目が留まった。
ニューヨーク州にあるStorm King Golf Club / ストームキングゴルフクラブは、「9ホールでありながら、50ホール以上の体験ができる」という、常識を覆すようなコンセプトのコースだというのだ。

私はこれまでにも、「同じ9ホールを複数のルーティングで楽しむ」タイプのコースを何度か経験してきた。
中でも印象深いのが、タスマニアのキングアイランドにあるKing Island Golf & Bowling Club / キングアイランドゴルフ&ボウリングクラブである。
海に面した素朴な9ホールのコースだが、9ホールの敷地にティーイングエリアが17か所、グリーンが12か所あり、それらを組み合わせて18ホールのレイアウトにしているコースである。
これにより、よくある9ホールを2周するレイアウトより変化のあるレイアウトを楽しむことができた。
ただし、それでもプレーの「骨格」は変わらず、ルートががらりと変わるような大胆な発想はなかった。
一方、今回紹介されていたStorm King Golf Clubは、そのルーティングの柔軟性が段違いに高い。
9ホールというコンパクトな敷地に、5通りの異なるループを設定できる設計が組み込まれており、その組み合わせによって、なんと「50ホール以上の異なるホール体験」が可能になるという。
グリーンも1つのグリーンに2~4ホールが交差するダブルグリーンが3つ、トリプルグリーンが2つ、クワッドグリーンが1つにシングルグリーンが4つある構成で、ティーイングエリアは30以上の多方向にティーショットするように配置されていて、1つのグリーンでもアングルを変えることで別のホールのように楽しめるようになっている。
更に面白いのは通常のレイアウトの中に19ホールのパー3のレイアウトも配置されていて、気分によって使い分けすることができるのだ。
つまり、これは単なる「9ホールを2周するコース」ではない。
設計そのものが多様なホールとしてプレーされることを前提に構築されている。このアプローチには驚かされた。
Storm King GCのホームページからコースの写真を使用させていただけないかとメールを送ったところ、オーナーのデビッド・ギャング氏から直接、最新のコースの写真を提供いただいた。ありがとうございます。
写真を見ると、コース整備が素晴らしいのがわかる。


フェアウェイもアンジュレーションがあり、高低差もあるコースはラウンドしがいがありそう。


今のところ、Storm Kingはプライベートクラブであるため、誰でも予約してラウンドできるわけではないが、「限られた土地で多様なプレー体験を生み出す」という設計思想は、将来のゴルフ設計の方向性としても非常に興味深い。


次のニューヨーク旅では、必ず立ち寄ってみたいコースのひとつである。



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