先日、那覇のRUM & ROOTSというラム酒を800種類そろえているバーに行ってみた。
そこでレユニオン島のラムに出会った。
出してもらったのは Savanna Grand Arôme。香りを嗅いだ瞬間、脳内では「アグリコールだ」と結論づけていた。刈りたての草のような青さ、ハーブ、青い果実——自分が好む方向の“グリーン”が立ち上がってきたからである。
ところが、これが糖蜜(モラセス)由来、つまり一般に言う「インダストリアルラム」だと教えてもらった。
しかもSavalle(サヴァル)式のコラム蒸留で、度数も高い。自分の中の「糖蜜=甘く丸い」「フランス領=アグリコール」という雑な図式が、覆された。
ここで重要なのが “Grand Arôme(グランアローム)” というスタイルである。
グランアロームはざっくり言えば、樽で整える前に、発酵と蒸留の設計で香りを最大化する発想。
また、サヴァンナの「Grand Arôme Lontan」などは、長い発酵(例:10日程度)や工程上の工夫によって強い芳香を作る。
要するに、体感として残った結論はこうである。
香りの方向を決めるのは「搾汁か糖蜜か」だけではない。発酵の設計と蒸留の残し方も重要だということ。
レユニオンは、フランス圏にありながら、マルティニークの延長線だけでは説明できない。別の進化をしていた。
レユニオン島の3つの蒸留所
レユニオン島はフランス海外県であり、同じフランス領ラムとしてマルティニークと並べて語られることが多い。
しかし、実際にそれぞれのラムの飲み比べると、その中身はかなり異なる。
マルティニークがAOCに基づいたアグリコール文化を突き詰めてきたのに対し、レユニオンは複数の文脈が同時に存在する島である。
その構造を理解する鍵が、以下の3つの蒸留所だ。
Savanna(サヴァンナ)
サヴァンナは、レユニオンの中でも最も“攻めた”存在で、原料が糖蜜であれサトウキビジュースであれ、焦点は一貫して「香りをどう設計するか」にある。
発酵や蒸留の条件にこだわったGrand Arôme(グランアローム)系のラムで世界的にも評価されている。
レユニオンが単なるフランス系ラムではないことを、最も理解させる蒸留所である。
Rivière du Mât(リヴィエール・デュ・マ)
1886年創業の老舗で、レユニオン島最大級の生産規模を誇る蒸留所である。
派手なコンセプトで語られることは少ないが、島の需要を安定的に満たし続けてきた存在であり、島の“日常側”のラム文化を知る入口にもなる。
Isautier(イゾティエ)
イゾティエは、レユニオン島最古級の蒸留所のひとつである。
歴史の厚みだけでなく、敷地内には「La Saga du Rhum(ラ・サガ・デュ・ラム)」というラム酒の歴史と製造過程を体験できる島の3つの蒸留所が共同で運営している博物館があり、ラムを「文化」として伝える役割を担っている。
島のラム文化を外部に紹介する際、最も“顔”になりやすい存在である。
シャレットという日常に飲まれているレユニオンのラム
レユニオンにはCharrette(シャレット)と呼ばれている島で最も広く飲まれてきた定番のラムがある。
これは3つの蒸留所のラムをブレンドしていて、家庭やバーで日常的に消費されてきた“普段着のラム”である。
「この島の人たちが、ラムをどう飲んできたか」を理解するにはシャレットを飲むのがわかりやすい。
レユニオンのラムは三層構造でできている
サヴァンナのような尖った設計思想、
リヴィエール・デュ・マのような日常を支える基盤、
イゾティエのような文化的広がり。
この三層が同時に存在していることが、レユニオン島のラムを特別な存在にしている。
マルティニークとも、ジャマイカとも違う。
一つの方向に寄らず、いくつもの顔を持った島だからこそ生まれるラムがレユニオンのラムである。
レユニオン島のゴルフコース
レユニオン島を知っていた理由の一つが、私のバケットリストに Golf du Bassin Bleu が入っているからである。
ラムを飲んでレユニオン島のことを思い出したのだが、この機会に島の全ゴルフコースについても調べてみた。
島には以下の3つのコースがある。レユニオンを訪れた時は全てラウンドしてみようと思う。
Golf du Bassin Bleu(ゴルフ・デュ・バサン・ブルー)
開場は1992年。レユニオン島を代表するパー71の18ホール。Robert Berthetが設計とサイトには記載されているが、ロバートの案は等高線に沿ったレイアウトで、その案ではなく実際は創設者のDenis Bigeardのアップダウンのある案が採用されたようだ。
前半9ホールは海に向かって開けた景観が広がり、後半9ホールはユーカリ林に囲まれた内陸的な表情へと切り替わる。1ラウンドで島の二面性を体感できる。
私のバケットリストに残っているコースでもある。
Golf Club de Bourbon(ゴルフ・クラブ・ドゥ・ブルボン)
レユニオン島最古のコース。開場は1969年に9ホールで開場。
当初は9ホールとして開場し、1991年にMichel Gayonが18ホールへ拡張・再設計した。
黒い砂地と熱帯林に囲まれた立地で、いわゆる「南国リゾートゴルフ」とは異なる、重く湿度のある空気感があるコース。
※ Bourbon はウイスキーの「バーボン」と同じ綴りだが、フランス語でレユニオン島の旧名に由来する「ブルボン」と読む。










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