第八話「ゴルフの原点スコットランド、リンクスゴルフ旅」

4章.花崗岩の街、アバディーン

スコットランド8日目

アバディーンの朝の街を散歩してみた。

アバディーンはエディンバラ、グラスゴーに次ぐスコットランド第三の都市。

花崗岩の産地としても知られていて町の建物のほとんどが花崗岩で造られていてとても綺麗な街並みだった。

街で朝食を食べるところを探してみたが日曜日なので朝から営業しているお店は見つからず、ホテルで朝食を取ることにした。

アバディーンダグラスホテルというホテルに昨夜チェックインしていて2連泊する。

バッフェ形式なので好きな物を取ればいいのだが、結局、今日もスコティッシュフルブレックファスト。

今日はアバディーンの北にあるトランプインターナショナルゴルフリンクスをラウンドする。

アメリカの不動産王がスコットランドに造ったリンクス

スコットランドゴルフ旅の第9ラウンドはアバディーンの北にあるトランプインターナショナルゴルフリンクス

今回の旅は18ラウンドの予定なのでこのラウンドを終えるとちょうど半分が終了。

開場は2012年。世界中にゴルフコースを造り、そして買収して所有コースを増やしているアメリカの不動産王のドナルド・トランプ(このラウンドした2年後にアメリカ大統領になった)がスコットランドに新設コースとして造ったリンクス。

設計はマーティン・ハウツリー

祖父がフレドリック・ジョージ・ハウツリー。そして父親がフレッド・ウィリアム・ハウツリーと親子三代に渡り、ハウツリーリミテッドというゴルフコース設計事務所を経営している。

世界で最も長く続いているゴルフコース設計事務所らしい。

祖父のF・G・ハウツリーはジェームス・ブレードとも共同設計をしており、親子三代が、ロイヤルバークデールの改造を担当している。

そんなリンクスを知り尽くした一族の末裔が造ったコースは自然な地形を人の手を使って整形したバランスのよいレイアウトのコースだった。

米国ゴルフマガジン社が発表しているTop 100 Course in the Worldに2013年から2017年までランクインしていた。最高位は46位(2017年)。


アバディーンで友人達と夕食を食べた後は友人達と別れて、イギリスでしか飲めないカスクコンディションのイギリス産のエールビール、いわゆるリアルエールを飲みに行くことにした。

リアルエールとは何か。

まず、ビールには大きく分けて発酵のタイプで、エール(上面発酵)、ラガー(下面発行)、ランビック(自然発酵)に分けられる。

現在、世界的に飲まれているのは下面発酵のラガー。エールより低い温度(5度ぐらい)でじっくりと熟成させてキレがあり苦みが感じられるビール。

ベルギービールで有名な自然発酵のランビックは酸味が感じられるビール。

そしてエールは常温(15度~25度ぐらい)で短期間で熟成させてフルーティーで薫り高いビール。

そのエールの中でもカスクコンディションのビールをリアルエールと呼ぶ。

次にカスクコンディションとは何か。

カスクコンディションとは樽内熟成という意味で、醸造されたビールが出荷され、パブやバーで最終的に樽(カスク)内で発酵を進ませて、セラーマンと呼ばれる人物が飲み頃を判断して翌日から客に提供されるエールのことを言う。

樽内で熟成されたカスクコンディションのエールは24時間以内に消費しないと発酵が進み美味しくいただけないので、イギリスで造られたカスクコンディションのリアルエールはイギリスでしか飲めない。

そしてリアルエールとわざわざ呼ばれているには理由があり、ケグエールと呼ばれるエールがあり、このケグエールは日持ちさせるために発酵を止めるためにフィルターでろ過して、熱処理をし、樽詰めして出荷される。そして客に提供される時に炭酸ガスを注入して飲まれる。

泡がクリーミーなビールを楽しめるので近年はリアルエールよりケグエールのほうが人気があるようだ。

つまり、リアルエールは自然な発酵、炭酸を楽しめる究極の生ビールなのだ。

そんなリアルエールを飲みに、朝にアバディーンの街を散歩したときに目星をつけていたCASC BARというバーに行ってみた。

綴りが違うが、名前がカスクバーなのでカスクコンディションされたリアルエールがあると思い、お店の中に入るとリアルエールの特徴の木製のハンドポンプのサーバーが見当たらない。お店の人に念のために聞いてみるとやはりこのバーでは取り扱っていないとのこと。

CASC BARのビアサーバーの写真ではないが、このタイプのビアサーバーのお店はリアルエールは取り扱っていない。ガスを注入するケグエールのお店だ。

歩いて2、3分の距離にあるリアルエールを飲めるお店を教えてもらい、そちらに移動。

プリンスオブウェールズというパブ。創業1850年と書いてある。

そしてこちらが木製のハンドポンプのサーバー。正真正銘のリアルエールがいただけるパブ。

写真に写っているセラーマンは、なんと父親がスコットランド人で母親が日本人のハーフのセラーマン。日本語ペラペラのヒロシさん。

さっそくリアルエールを次から次へといただいた。

結局、全種類いただいて、気持ちよく寝れた夜になった。


スコットランド9日目

今日はロイヤルアバディーンとクルーデンベイをラウンド。

昨晩、パブでリアルエールを飲み過ぎて、少しアルコールが残っているので朝食代わりに買い置きしていたショートブレッドで。

小麦粉、バター、砂糖、塩で作られるスコットランドの伝統的なお菓子である。

クッキーはバターに砂糖を混ぜて、その後、卵を混ぜた後に小麦粉を入れるのに対して、ショートブレッドは先に小麦粉にバターを混ぜて最後に砂糖を入れることで、ショートブレッド特有のボロボロした食感になるようだ。

まずはロイヤルアバディーンをラウンドしてくる。旅の後半戦のスタートだ。

「ボール探しは5分まで」のルールを作った世界で6番目に古いゴルフクラブ

スコットランドゴルフ旅の第10ラウンドはロイヤルアバディーンゴルフクラブ

1780年にソサエティー・オブ・ゴルファーズ・アット・アバディーンという名前で創設され、1815年にアバディーンゴルフクラブに改称。

ロイヤルの称号は1903年に得て、ロイヤルアバディーンゴルフクラブに。

世界で6番目に古いゴルフクラブで「ボール探しは5分まで」というルールが作られたクラブとしても有名。

元々はアバディーンの北側に流れるリバー・ドンと南側に流れるリバー・ディーの間の土地にコースがあったが、1886年に現在の場所に移ってきた。

ロイヤルアバディーンにはメインコースのバルゴウニーリンクスと距離が短い婦人向きのシルバーバーンコースの2コースある。

バルゴウニーリンクスをラウンド。

コース設計はアーチー・シンプソンロバート・シンプソンのシンプソン兄弟。

そして三巨頭と呼ばれていた一人のジェームズ・ブレイドがバンカーの改造を行った。

近年ではマーティン・ハウツリーが改造を担当。

2014年には、スコティッシュオープンが開催された。

劇的なホールはなく、地味だけど玄人好みのリンクスだった。


ロイヤルアバディーンでのラウンドを終えてクラブハウスでランチをいただくことにした。

クラブハウスの中にはロイヤルアバディーンの象徴の赤いジャケットも展示されていた。

一番ホールを眺めながら食事することができる。スコットランドの伝統料理のスコッチミンチパイをオーダー。飲み物は、ベルヘイブンのベスト(スコッチエール)を。

スコッチパイや単にパイと呼ばれていることのほうが多いかもしれない。中には羊のミンチが入っていた。

北海の断崖にある古城が見えるコース

スコットランドゴルフ旅の第11ラウンドはクルーデンベイゴルフクラブ

この地でのゴルフは1791年のクルーデンゴルフクラブにまで遡る。

現在のコースより北側のスレインズ城近くで9ホールのゴルフコースがあったという記録が残っている。

そして1899年にグレートノースオブスコットランドレイルウェイがクルーデンベイホテルと一緒に現在の土地にコースを開発。

設計はトム・モリスと助手としてアーチー・シンプソンが担当。

この時、9ホールのレディースコース(セントオラフコース)も同時にオープンした。

クルーデンベイゴルフクラブが設立されたのは1900年の前後で、1926年にはトム・シンプソンハーバート・ファウラーが改造をして現在のレイアウトになった。

クルーデンベイホテルは、1947年に取り壊されて軍に接収されたが、その跡地に現在のクラブハウスが建てられて現在に至る。

米国ゴルフマガジン社が発表しているTop 100 Course in the Worldに1995年から最新の2023年までずっとランクインしている。(最高位は52位・1999年)

また4番ホールはThe 500 World’s Greatest Golf Holesにも選出されている。(更にこの500ホールの中から最も景観の良い18ホールが選出されるThe Most Scenic Holesにも選出)

クルーデンベイは私が大好きなリンクスの1つになった。

各ホールともメモラビリティーが高く、それぞれ特徴があり、食べ物に例えると、幕の内弁当のようにいろいろと楽しめる素晴らしいコースだと思う。


クルーデンベイをラウンド中に何度か遠くに見えた北海の断崖に佇むスレインズ城

見学に行ってみることにした。

アイルランド人の小説家ブラム・ストーカーの代表作「ドラキュラ」

その小説に出てくるドラキュラ城のモデルになったのがこのスレインズ城である。らせん階段を登り、二階から、クルーデンベイゴルフクラブ方向を眺めてみた。


今夜の宿泊先はクルーデンベイから110マイル西のインヴァネスの街。2時間半で到着した。

インヴァネスはスコットランドで8つあるシティーの1つで、ハイランド地方で唯一のシティーでハイランズの首都と呼ばれている。

街の中央にはネス川が流れて、南にあるネス湖に繋がっている。

夕食はネス川沿いのレストランのロックプールで。

ビールは1998年にインヴァネスに設立されたブラックアイルのブロンドラガーを。

スープは蟹とスイートコーンのスープ。貝や海老なども入っていてダシがよく出ていて、コリアンダーやココナッツクリームがとても良いアクセントになっていて美味しかった。

グリルしたキングプラウンとホタテのガーリック風味のリングイネ。ホタテも海老もゴロゴロ入っていて大満足。

食事を終えると町に灯りが。

ネス川の水面に反射する街の灯りは美しく、ライトアップされたインヴァネス城は荘厳だった。

     
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