朝食はホテルから街へ出て、ニャチャン名物のBánh Căn / バンカンを食べに行くことにした。
路地の角に鉄板をぐるりと囲むように並べた素焼きの型が置かれ、その一つ一つに生地と卵を流し込んでいく。炭火の上でじっくりと焼かれていく様子を眺めているだけで、すでにお腹が空いてくる。


焼き上がったバンカンは、外側がほんのり香ばしく、中はふわふわ。
ニャチャンではこのバンカンを、刻んだ青ねぎたっぷりの温かいスープに浸して食べるスタイルが多い。

器の中にバンカンを沈め、細切りの青パパイヤ(もしくは青マンゴー)と一緒に食べる。
具材が乗ったバンカンもあったが、言葉が通じないので一番ベーシックな卵のみのバンカンが出てきた。
生地がフワフワの食感で葱のスープと相性がよくあっという間に完食してしまった。
ホーチミンでもバンカンを食べたことがあるが、このフワフワ感は本場のニャチャンだからなのかもしれない。

バンカンとバインコットの違い
以前、ブンタウで食べたBánh Khọt / バインコットと似ているが、同じ「丸い米粉の粉もの」でも、地域によってスタイルが大きく違う。
- バインコット(ブンタウなど南部)
ココナッツミルクを混ぜた生地を鉄製の焼き型でたっぷりの油で揚げ焼きにし、ターメリックで黄色く色付けする。エビなどの具がのっていて、外側はカリッカリ。山盛りのハーブと一緒に、甘酸っぱいヌックマムだれに浸して食べる、“おつまみ感”の強い料理だ。
ブンタウで食べたバンコットの記事
- バンカン(ニャチャン〜中南部沿岸)
生地はもっと素朴で、油もほとんど使わず、素焼きの型でじっくり焼き上げる。具は卵だけのものもあるがエビやイカなどバインコットと同じようなものもある。焼き上がったものをスープやたれに浸して食べる。軽い朝食やおやつにぴったりの優しい味わいだ。
ホーチミンで食べたバンカンの記事
同じ丸い一口サイズでも、南部は「揚げ+ココナッツミルク」で攻めるこってり路線、中南部は「焼き+スープ」でふんわり路線。旅をしながら食べ比べてみると、ベトナムの地域性がよくわかって面白い。
チャンパ文化とのつながり
ニャチャンを含むカインホア一帯は、もともとチャンパ王国の中心地だったエリアで、今もチャム人のコミュニティやチャンパ遺跡が点在している。
バンカンの正確な起源ははっきりしていないものの、中南部沿岸で古くから食べられてきた料理で、チャム系の食文化の影響を受けているのではないか、という説もある。
「チャンパ料理そのものだ」と言い切れるほどの証拠があるわけではないが、ニャチャンの街で、チャンパの遺跡を見たあとにバンカンを食べると、どこか古い海の王国とつながっているような気がしてきた。






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