上海は12年ぶり。けれど、20年前は二か月おきに通っていた街だ。
その頃はまだ存在していなかったSpeak Lowを、今回ようやく初めて訪ねた。入口はバーツールショップOCHOの本棚の奥。隠し扉を抜けると、バーフロアにつながる秘密の通路が。教科書のようなスピークイージーである。
Speak Lowは世界的なバーテンダー後閑信吾がNYのAngel’s Shareで腕を磨き4代目ヘッドバーテンダーとなり、2012年のBacardi Legacy Cocktail Competitionの世界大会で優勝。その受賞作品名を冠し、2014年に開業したバーである。


Speak Lowは私が今いちばん行きたいバーの1つだった。その理由は、2018年に遡る。
2018年6月に後閑信吾が渋谷に満を持してSG CLUBをオープン。
当時、渋谷に住んでいた私は早速、飲みに行き、そのカクテルのクオリティに感動した。その年の私のブログのフード・オブ・ザ・イヤーの最高の1杯部門にも選んでいる。
2018年のフードオブザイヤーの最高の1杯部門の記事
東京の渋谷に今年オープンしたSG CLUBのベントンズオールドファッションド。
SG CLUBは世界で活躍する後閑信吾が新たにオープンしたバー。
一階と地下に店舗が分かれて一階は昼から営業。
一階はGuzzle(ぐい飲み)するほうのお店。
地下のオーセンティックなSip(チビチビ飲む)なバーは6時から営業。
一階のGuzzleのメニューにニューヨークのスピークイージーのPDTで飲んだことのあるメニューがあったのでオーダー。
それが、ベントンズオールドファッションド
こっちの方が美味い。オリジナルを超えた。
オリジナルは2016年のフード・オブ・ザ・イヤーの最高の一杯部門に選ばれてる。
ちなみに地下では1階より豪華なベントンズオールドファッションドが飲める(ベーコンが神戸ビーフのビーフジャーキーに)が、私は1階のほうが好き。


そして同年の10月に発表されたThe World’s 50 Best Bars 2018では、彼が独立後、最初に開業したSpeak Lowが20位にランクインしているのを知って、いつか行こうと心に決めた。
SG CLUBには開店直後は、昼から飲める貴重なバーなので度々、利用させてもらっていたがその年の秋に15年間の東京生活を終了し、京都に拠点を移し、通う頻度は落ちたが、翌年の2019年のフード・オブ・ザ・イヤーの最高の1杯部門にも選んでいる。
2019年のフードオブザイヤーの最高の1杯部門の記事
昨年も受賞した東京の渋谷の後閑信吾が率いる「SG Club」。
映画「YUKIGUNI」を見た後にSG Clubに。
映画を観てきた話をして「カクテルはやはりシンプルなカクテルが美味しいですね。」と語ったあとにオーダーした「イーストオブザサン」。
ボンベイサファイア、コブ蜜柑、泰生姜、唐辛子を使用。
「これ好き嫌いが分かれるカクテルなんです。飲んだらタイ料理!って思うはずです。」
と言われて、ワクワクしながら飲んだら想像を超えた感動が。
飲んだ瞬間にグリーンカレー!!?と思う複雑なカクテル。
でもカクテルとしてまとまっている。
衝撃を受けた。
本当に美味しいカクテルはシンプルでも複雑でもとにかく記憶に残るかどうか。
食事と同じである。

話は、これで終わりではない。
私は2020年秋に沖縄に移住した。そして2022年3月に後閑信吾は琉球とラテンアメリカを融合したバー、El Lequioを沖縄の那覇にオープン。
ここでも彼の遊び心ある数々のカクテルに魅了された。
El Lequioの記事
私は東京・沖縄で後閑信吾の進化をリアルに追ってきた。そんな流れで彼の原点・Speak Low初訪問となった。

メニューを見ながら一杯目はEarl Grey Martiniをオーダー。つまみにSpiced Nutsを。


アールグレイマティーニは、ボンベイサファイア・アールグレイ・コッキアメリカーノ・オレンジビターズを使用。
ベルガモットの上品な香りの後にコッキのビターな薬草感とボンベイの柑橘系の爽やかさが重なり合う香りを楽しむマティーニ。

2杯目はSerenityをいただいた。エリストフウォッカ・ライチチェッロ・ルビーレッドグレープフルーツ・ローズウォーターを使用。
青りんごっぽい香りがするエリストフをベースにほんのりとローズウォーターが香りながらライチの柔らかい甘みとグレープフルーツの苦みと酸味のバランスが素晴らしい。更に素晴らしいのは、ここまで大粒のライチはみたことない。

独立の最初の一歩に生まれ育った日本ではなく“上海”を選んだ判断は、彼をより一層世界的なバーテンダーへと押し上げるシナリオとして「正解」だったんだなと思った。
そして、2024年に彼の名と五感から名づけたGOKANを香港にオープン。都市が変われば戦略も設計図も変わる。
(SG CLUBの「S」は“Sip”(ちびちび飲む)、「G」は“Guzzle”(ぐい飲み)に由来するのは知っていたが、Shingo Gokanのイニシャルでもあることには今さら気づいた。)
その彼の進化を確かめに、次は香港を訪れたい。




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